コラム 〜より詳しく作品をご紹介〜

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2015.02.27

ようこそ、光の都パリへ

『椿姫』の物語の舞台は1850年頃のパリとされており、今回の演出でも、原作に忠実な時代設定で上演される予定です。では、この時代のパリというのは、一体どのような場所だったのか、ということからお話を始めたいと思います。

18世紀末にフランス革命が勃発したのちの、19世紀前半のパリは、帝政または王政と共和制を行き来するような、政治体制としては不安定な時期でした。一方、産業革命により、人々の生活や労働環境に変化が起こっていき、1850年頃には人口が100万人を超えたといわれます。当時のヨーロッパで、これほどの大都市となっていたのは、ロンドンとパリくらいでした。産業の発展、経済成長により、貴族や新興の資産家たちが富を得たことが、のちの『椿姫』誕生につながってゆくのです。

ところで、産業技術の発展がもたらした都市環境の変化のひとつに、ガス灯の設置が挙げられます。パリではそれまでにも、ロウソクやオイルランプによる街灯はありましたが、十分な明るさではなく、それが治安の悪さにもつながっていたようです。しかし、1830年代にガス灯が登場したことで、夜の街の文化がいっそう花開くこととなります。現在の街灯には、もちろん電気が使われていますが、灯柱は当時のガス灯時代のままだそうです。私たちが今も憧れを抱く「光の都パリ」のイメージの礎は、『椿姫』の時代にはあったのですね。

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