2023 全8公演 7/14(金)・15(土)・16(日)・17(月・祝)・19(水)・20(木)・22(土)・23(日)

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NEWS

「ドン・ジョヴァンニ」記者会見レポート!

モーツァルト至高の音楽、正統派の豪華な舞台、世界で活躍する歌手たちの競演でお送りする、夏のプロデュースオペラ「ドン・ジョヴァンニ」。2月中旬に神戸女学院小ホールで記者会見を開催しました。佐渡裕芸術監督、ドン・ジョヴァンニ役の大西宇宙さん、ドンナ・アンナ役の高野百合絵さんが登壇し、上演への意気込みを語りました!

佐渡 裕(芸術監督・指揮)

モーツァルト4大オペラの締めくくり

モーツァルトの作品は、当センターが開館間もない2007年に「魔笛」を取り上げました。2014年に「コジ・ファン・トゥッテ」、2017年に「フィガロの結婚」を上演しましたが、開館20年の区切りまでにモーツァルト4大作品をご覧いただきたいという思いがあり、その締めとして今回の「ドン・ジョヴァンニ」が決まりました。

私は、年に何ヶ月かはオーストリアのウィーンで過ごしています。家の前にはモーツァルトが最初に住んだアパートがあり、もうワンブロック行けば「フィガロの結婚」を書いたアパート、左に曲がれば亡くなったアパートがあり…という風に私の家から100メートルくらいの範囲に、モーツァルトに縁のある場所や歩いた道があります。ウィーンにいると、モーツァルトの作品が非常に身近になり、ウィーンの人たちが、あるいは世界中の人が、モーツァルトをいかに愛しているかというのをひしひしと感じます。

「ドン・ジョヴァンニ」は非常にドラマティックな作品です。その魅力は、悲劇と喜劇が混ざったような不思議なモーツァルトらしさにあるのではないかと思います。序曲は地獄や死を表すような音楽で始まります。一方、口説くシーンの歌唱では非常に優美な旋律を奏で、あるいはいたずら好きな面が見える楽曲もあります。このようにモーツァルトは、音楽の多面性で何層にもなった劇空間を「ドン・ジョヴァンニ」の中に作っていきました。まるで劇場に音楽を張り巡らせて皆さんを閉じこめているかのよう。その中で繰り広げられるという面白さに満ち溢れた作品なのです。モーツァルトのオペラの世界観を久しぶりに芸文センターで皆さんと届けられることを大変楽しみにしています。

デヴィッド・ニースさんとともに作る作品はこれで3作目になります。非常に信頼のおける演出家です。華やかでモーツァルトらしく、作品の本質を絶対に失わず、それでいて飽きないステージが期待されます。

今年も、熱量に満ちたステージに

芸術文化センターが開館してから18年、お客様方に本当に愛されて、このシリーズは、夏のお祭りのようになってきました。私自身、劇場空間に身を置くのが大好きなのですが、演者から発せられるエネルギーを受け止めた2000人のお客様が、それをまた舞台に返してくれる、そうした熱量の動きを非常に感じられる劇場になってきたと思います。今年も、その熱量をしっかり味わっていただけるような、センターの歴史の中で誇れる舞台にしたいと思います。

大西宇宙(ドン・ジョヴァンニ役)

バリトンが歌う“究極の役”で、プロデュースオペラ初出演

ドン・ジョヴァンニ役は色々な要素が詰まった究極の役。非常に人間味があるけれど、女性を誘惑する力があると同時に危険な人物であるという風に言え、声や音楽性、演技だけではなくカリスマ性そのものが問われる役です。それを初出演となる本プロデュースオペラで演じさせていただくというのは良い挑戦であり、今からわくわくして武者震いしています。

このオペラを考えたときに、最終的にこの登場人物のうち誰が幸せになるのか、ということを考えると非常に興味深いですね。私が以前に住んでいたニューヨークは、実は、台本作家のダ・ポンテが生涯の最期を過ごした地であり、彼とモーツァルトが創作したオペラについて、当地で色々と学ぶ機会を得ました。初演された当時はそれまでの階級制度、価値観がひっくり返る革命の前夜であり、ドン・ジョヴァンニや周りの登場人物がいかに時代の変化に立ち向かってどのような生き方をしていくのか、というところも、テーマの一つとして作品の根底にあるような気がします。モーツァルト自身ももう少し長く生きていれば、市民階級の興隆の流れに乗って、時代をリードした存在になっていたと思いますが、その直前の時代にあって、「ドン・ジョヴァンニ」は特権階級への抗議を堂々と素晴らしい音楽に包んで主張している、非常に勇気のある芸術作品だったのではないかと思います。

デヴィッド・ニースさんは非常に綺麗な舞台を作る方で、作品に対する読み込みが深い印象があります。以前にご一緒したプロダクションでは、言葉の隅々まで理解して演出されていましたので、今回もどのような人物描写をするのか楽しみです。

初共演となる佐渡裕マエストロは学生時代から憧れの存在でした。そのもとでこの究極の役をできることになり、過去の自分に、「将来、隣に座って記者会見をしているんだよ」と言ってあげたいと、感慨深い気持ちです!

高野百合絵(ドンナ・アンナ役)

一昨年の大抜擢後、さらに経験を積んで挑むドンナ・アンナ

2021年「メリー・ウィドウ」ハンナ役での出演をきっかけに沢山の方に高野百合絵を知っていただいたことで、皆様に応援していただけることに繋がり、オペラやコンサート、メディア等の出演の機会も多数いただきました。改めて、ハンナ役という大役を務められたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

今回演じるアンナという役は、芯がしっかりある一方、ドン・ジョヴァンニとの出会い、父親の死をきっかけに、初めて湧く感情に心が揺れ動く女性です。感情を表に出さないところもある箱入り娘なのですが、物語が進むにつれて、自分で人生を切り開いていこうという強い部分も見えます。そういったアンナの表現を、モーツァルトの美しい旋律で表現するのは大変難しいことです。また、この役のお話をいただいてから、イタリアやオーストリアでもじっくりと勉強し、色々な上演を観たのですが、アンナというのは演出により様々な解釈がありうる役どころ。この物語はアンナの部屋ではじまりますので、最初のシーンでのアンナの見せ方によって、ドン・ジョヴァンニの見え方、あるいはこの物語の見え方も変わってきます。とてもやりがいのある重要な役ですので、皆様と一緒に作品を作り上げていくのを楽しみにしています。

「ドン・ジョヴァンニ」題名役 大西宇宙たかおき
スペシャル・インタビュー

ドン・ジョヴァンニは、今、いちばん歌いたい役

“いま、最も多忙な日本人オペラ歌手の一人”といえる活躍をしている大西宇宙さん。
米国ジュリアード音楽院、シカゴ・リリック歌劇場を経て、2019年の日本デビュー後は様々な舞台への出演が続いており、評価は高まるばかり。今回のドン・ジョヴァンニ役には、すでに多くのオペラファンから期待の声が寄せられています!躍進する逸材のこれまでの歩みと、本役への意気込みを聞きました。

オペラへの道を切り拓き、渡米後、間もなくニューヨークでも話題に

ーオペラの道を志したのはいつ頃からですか?
中学・高校の吹奏楽部でチューバを吹いており、その演奏曲からオペラやミュージカルに興味を持ち始めました。面白いと思ったのは、複数人で違うことを歌いながらストーリーが進んでいくところ。楽器とは違う音楽の魅力に衝撃を受けました。その究極のかたちがオペラだと思ったのです。

ーその後武蔵野音楽大学で学ばれ、大学院在学中に最優秀賞を受賞したコンクールを機に米国ニューヨークにある名門ジュリアード音楽院に進まれました。
2010年に渡米しましたが、初めは英語が得意ではなく苦労しました。そんな中、留学1年目に、学内で2名だけが選ばれる栄誉者リサイタルに選出され、学内外で話題にしていただけるようになりました。

ー映画、演劇の本場である米国ではオペラ歌手の育成においても演劇的なトレーニングを重視していると聞きます。
ジュリアードには演劇の学科もあるので、演技指導の先生がオペラ科の学生にも授業をします。そこではシェイクスピアやチェーホフの戯曲が扱われ、「ハムレット」の長大な独白を発表の場で披露するという経験もしました。英語がネイティブではない自分にとっては挑戦的でしたが、糧になった経験でした。
また、お世話になったコレペティトゥアの先生が「Text is everything(歌詞こそがすべて)」と常におっしゃっていたように、オペラでも台本が先にあるということ、言葉を伝えることの重要性を、深く学びました。

「歌い手は舞台を通じて成長する。」

ー2015年にジュリアードを卒業され、米国の名門であるシカゴ・リリック歌劇場に所属されます。ここではどのような経験をされましたか?
シカゴでは年間に8つ程のプロダクションが上演されていて、参加したのはその半分程、公演数にすると3年間で6~70回でしょうか。そこでは、準主役級や様々な役での出演のほかに、主役級の有名歌手のカヴァー(代役)を務めることもありました。シカゴではカヴァー歌手も公演に欠かせない存在として扱われますので、入念に準備をすることができ、経験を積むことができます。実際にカヴァーとして公開リハーサルの途中に交代したこともあり、その時に責任をもって仕事を完遂できたことが自信になりました。

2019年2月ニューヨーク・カーネギーホール シベリウス「クレルヴォ交響曲」題名役
2019年8月セイジ・オザワ 松本フェスティバル チャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」題名役


ーその経験が生き、日本デビューは代役で出演した、セイジ・オザワ 松本フェスティバル「エフゲニー・オネーギン」題名役で成功を収められました。
日本ではオペラの上演機会自体が少ない中、注目度の高い公演に、しかも自分に合った役でデビューを果たせたことは良かったですね。

ーその後の日本での活躍は目覚ましく、2022年は数多くの作品に出演されました。多彩な活動の中、意識されていることはありますか?
挑戦的な作品も含め、幅広いレパートリーを持つことと同時に、長く歌い続けていくために、声に合った作品を選ぶようにしています。米国では声に合うレパートリーを歌うことが教育において重視されていて、慎重に役を選ぶように教えられました。イタリア語、フランス語のオペラといった言語での分類ではなく、役ごとに、その時の年齢なども考慮して選ぶのです。
今後はヨーロッパの歌劇場も含め、世界の様々な舞台で歌い続けていきたいので、長期的に考えて自分のキャリアに適しているかを見極めるようにしています。そのために、仕事を受けるときには米国のマネージャーやヴォーカルコーチに相談しています。マネージャーは世界的な歌手も手がける辣腕ですし、二人とも自分の声を良く分かってくれているので信頼して助言を受けています。

2021年12月 芸術文化センター「ジルヴェスター・ガラ・コンサート」では、ヘンデルのオペラ・アリアを披露。


機は熟した。今こそ歌うべき「ドン・ジョヴァンニ」

ーそうして着実にキャリアを築いておられる大西さん、では、今回の「ドン・ジョヴァンニ」は今のご自身にとってどのような役でしょうか?
今いちばん歌いたい役です! まさに今、というタイミングでお話をいただきました。
これまでに、学生オペラや抜粋でこの役を歌ったことはありますが、プロフェッショナルな舞台で全幕を歌うのは、今回が初めてです。
この役を歌う上では、格好いいだけではなくて、カリスマ性、そして魔力が必要です。また、アジア人として米国でオペラを仕事にしていると色々と感じることもありましたが、ドン・ジョヴァンニは人種に関係なく、人間としての魅力を出すことが求められる役です。“究極の役”と言えるでしょうか。
モーツァルトのオペラを勉強して心得たのは、当時は革命もあり、人間としてどう生きるかが問われた激動の時代であったということ。ある意味、それまで支配者階級であったドン・ジョヴァンニが逆境に立たされ、その中で強い人間性を持った。そういう人物像を表現できればと思います。

ー今回が芸術監督プロデュースオペラ初登場、佐渡裕芸術監督とも初共演ですね。
2014年のプロデュースオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」に出演したスザンナ・フィリップスさんとカーネギーホールで「ドイツ・レクイエム」を共演した際に、彼女から「兵庫は素晴らしいプロダクションだ」と聞いていました!
佐渡さんには、18歳くらいの時に演奏会でサインをいただいた経験があります(笑)。当時、日本人も世界的に活躍できるのだということを強烈に印象付けられた、憧れの存在でした。今回、私の声を聴いていただいて出演できることになり、嬉しく思います。

ー演出家やほかの歌手の方々とはいかがですか?
演出のデヴィッド・ニースさんのプロダクションには参加したことがあり、以前から私のことを気にかけてくださっていました。
今回、もう一組でドン・ジョヴァンニ役を務めるジョシュア・ホプキンズさんとはシカゴで共演したこともあり、またお会いできるのが楽しみです。
同じ組にも今までに共演した方が何名かおり、特にレポレッロ役の平野和さんとは地元が同じという縁もあります。ウィーン・フォルクスオーパーで色々な経験をされていますし、レポレッロは当り役。私の方が後輩ですが、主従役を演じるのが楽しみです。

ー最後に、お客様へのメッセージをお願いします!
「ドン・ジョヴァンニ」は私にとって特別な役。ぜひ、舞台のすみずみまで見てください!

ーありがとうございました!

【関連企画情報】ハイライトコンサート&ワンコイン・プレ・レクチャーも同時発売!

「ドン・ジョヴァンニ」の曲や名場面をぎゅっと凝縮した「ハイライトコンサート」、そして楽しく詳しくオペラ予習ができる「ワンコイン・プレ・レクチャー」を今年も開催いたします。作品を 100 倍楽しむ、おトクで盛りだくさんのプレイベントにぜひお越しください!

いずれも、
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
料金:500 円(全席指定・税込)
芸術文化センター会員先行予約受付開始:2/23(木・祝)、一般発売:2/26(日)です。

「ドン・ジョヴァンニ」
ハイライトコンサート~ええとこどり!

>チラシを見る
4/19(水)・20(木) 各日3:00PM
[イタリア語上演・日本語字幕付/約1時間40分・休憩あり]
★インターネット予約はこちらから

過去のハイライトコンサートより(2022年「ラ・ボエーム」)

オペラ初心者の方も気軽に楽しめる、毎年大好評の企画!
「ドン・ジョヴァンニ」の見どころ、聴きどころが詰まったハイライトコンサートです。
関西で活躍するオペラ歌手が歌い演じ、ピアニスト&名司会者の伊原さんのお話が会場を沸かせます。
兵庫県各地のホールでのツアー公演も開催しますので、ぜひお出かけください!

出演:下林一也(ドン・ジョヴァンニ)、白石優子(ドンナ・アンナ)、矢野勇志(ドン・オッターヴィオ)、森 季子(ドンナ・エルヴィーラ)、西村圭市(レポレッロ)、斉戸英美子(ツェルリーナ)、武久竜也(騎士長/マゼット)、伊原敏行(ピアノ/お話)
構成・ステージーング:髙木 愛、音楽スタッフ:西尾麻貴

【ええとこどり県内ツアー♪】

県内6会場で開催。詳しくは各会場へお問い合わせください。
※芸術文化センターでは県内ツアーのチケットお取り扱いはございません。

開演時間はすべて3:00PM
◆洲本公演 4/23(日)
洲本市文化体育館 文化ホール しばえもん座
TEL:0799-25-3321
◆稲美公演 4/29(土・祝)
稲美町立文化会館 コスモホール
TEL:079-492-7700
◆三田公演 5/3(水・祝)
三田市総合文化センター 郷の音ホール 小ホール
TEL:079-559-8101
◆丹波篠山公演 5/6(土)
丹波篠山市立田園交響ホール
TEL:079-552-3600
◆市川公演 5/7(日)
市川町文化センター ひまわりホール
TEL:0790-26-0969
◆小野公演 5/14(日)
小野市うるおい交流館エクラホール
TEL:0794-63-8566

ワンコイン・プレ・レクチャー

>チラシを見る
楽しく詳しく作品を予習できるプレ・レクチャー。今年は5月6月の2回にわたり、「ドン・ジョヴァンニ」の世界へ皆様をいざないます![各回 約1時間30分・休憩なし]

過去のプレ・レクチャーより

2017年「フィガロの結婚」
2022年「ラ・ボエーム」


第1回 ドン・ジョヴァンニ大解剖!
~のちの時代にも愛された名曲の数々 〈生演奏つき〉

5/25(木) 11:30AM/2:30PM
★インターネット予約はこちらから

モーツァルトの才能が一番発揮されているのはオペラ!特に「ドン・ジョヴァンニ」には印象的な旋律、名曲がずらり。それらの楽曲は、のちの時代の作曲家にも多くのインスピレーションを与えました。
その音楽の魅力を、指揮者であり、作曲家・チェンバロ奏者とマルチな才能を発揮している根本卓也さんのレクチャーで大解剖。山本徹さんのチェロ、お二人の歌手による実演もあります。

講師:根本卓也(指揮者、作曲家、チェンバロ奏者)、演奏:山本 徹(チェロ)、老田裕子(ソプラノ)、迎 肇聡(バリトン)



第2回 これであなたもドン・ジョヴァンニの虜
~アブナイ男ほど魅力的!? 〈映像つき〉

6/16(金) 11:30AM/2:30PM
★インターネット予約はこちらから

モーツァルトのオペラの中で、最もドラマティックな作品である「ドン・ジョヴァンニ」。その作品が生まれた時代背景には、更に深いドラマが。そしてモーツァルト自身の境遇が色濃く反映されています。
イタリアでの生活も長く、国内外のオペラを知り尽くした講師、井内美香さんが映像を交えながら、分かり易くレクチャーします。

講師:井内美香(オペラ・キュレーター)

歌劇『ドン・ジョヴァンニ』特設ウェブサイト公開!

チケット情報、イベント情報など、本公演に関するさまざまな情報をこちらでお伝えしていきます!お楽しみに!