ここはボヘミアの森。狩人マックスは悩んでいた。護林官の娘である恋人アガーテと結婚するための条件は、
明日の射撃競技会で優勝すること。しかし大スランプに陥っているのだ。そこにつけこんだ狩人カスパーが、
とんでもない話を持ちかけてくる。百発百中の「魔弾」を使えというのだ。
一方、部屋で恋人の帰りを待つアガーテ。不吉な予感に苛まれる彼女のもとにマックスが帰ってくる。
心配する彼女が止めるのも聞かず、マックスは魔弾を手に入れるため、夜の森へと出かけてしまった。
真夜中の狼谷。悪魔ザミエルと契約し魔弾を手に入れたカスパーは、新たな生贄としてマックスを差し出す
代わりに契約延長と新たな魔弾を懇願する。しかし、悪魔は「7発の魔弾のうち最後の1発は自分の思い通りに
する」と言い残して消える。そうとも知らずマックスは、ついにカスパーと共に魔弾の鋳造に取りかかる―
そして運命の射撃競技会。果たしてこの魔弾の行方は・・・マックスとアガーテの運命は・・・?


序曲が始まると、そこはもうドイツの森の中―
印象的なホルンの四重奏により一気に森の情景が眼前に広がります。
ドイツ人にとって魂の故郷ともいうべき特別な意味を持つ“森”。
その森を舞台に、古い民話を素材にドイツの民衆の生活そのものを描いたオペラ「魔弾の射手」。
ドイツオペラの金字塔です。
射撃競技会で優勝するため、禁断の魔弾に手を染めたマックス。
悪魔に魂を売り手に入れた魔弾の行方は―魔弾をつくる場面では魑魅魍魎が飛び回り、次々と起こる
不吉な現象・・・息つく暇もないスリリングな展開。そしてロマンティックでドラマティックな音楽が
この物語を彩ります。マックスがアガーテへの愛を歌う「森を越え、野を越え」や、切ない恋心を歌う
アガーテの「まどろみは近づき」などアリアの名曲も多数ですが、特筆すべきは「狩人の合唱」。
有名なこの合唱曲は一度耳にすればすぐに覚えられるメロディで心沸き立ちます。
そして総勢60人に上る大合唱。それはもう圧巻の一言。
マエストロ佐渡のタクトであなたもウェーバーの音楽の魔力に引き込まれることでしょう。

演出はミヒャエル・テンメ、装置にはフリードリヒ・デパルムと、本場ドイツ、オーストリアからの
コンビを招へい。ドイツオペラの正統的スタイルを継承した演出により、30年戦争後の荒廃したドイツの深い森を
ここ兵庫につくり出します。そして、歌手陣にも盤石の布陣がそろいました。
愛しい女性のために禁断の魔弾に手を出し苦悩するマックス役には、世界的なヘルデンテノールとして
名高いトルステン・ケールとクリストファー・ヴェントリスという夢のダブルキャストが実現!
マックスを信じるアガーテ役にはドイツオペラ界で頭角を現す、ジェシカ・ミューアヘッドとカタリーナ・ハゴピアン。
エンヒェンには躍進中の小林沙羅とマリア・ローゼンドルフスキー。そしてマックスを悪の世界へと陥れる
カスパー役には昨年の「フィガロの結婚」伯爵役の熱演が記憶に新しい髙田智宏と2016年「夏の夜の夢」クインス役で
佐渡裕芸術監督より高い評価を受けたジョシュア・ブルームなど、錚々たる顔ぶれに期待が高まります。
舞台模型 狼谷での魔弾の鋳造シーン
舞台模型 アガーテの部屋
set model photo : design by Friedrich Despalmes